外で体調の悪そうな猫ちゃんを見かけて「何とかしてあげたい…」と、優しい気持ちで保護される方が多くいらっしゃいます。
お家で飼われているわんちゃん・ねこちゃん同様、当院に連れてきて下さったその気持ちに応えられるよう、私たちは診療にあたっています。
そんなとき、ちょっとだけ覚えておいてほしいことがあります。
それが「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」と「マダニの予防」について。
SFTSってなに?
SFTSとは、マダニが媒介するウイルス感染症。
感染すると発熱や下痢、血小板の減少などの症状が出て、重症化することもあります。
外で散歩したり遊んでいたらマダニがくっついていた!と慌ててわんちゃんやねこちゃんを動物病院に連れてこられる場合があります。
(吸血しているマダニを見つけたら、無理にひっぱらずに動物病院で処置してもらってくださいね)
もしそのマダニがSFTSのウイルスを持っていたら、わんちゃんやねこちゃんが感染する恐れがあります。
さらに、SFTSに感染したわんちゃんやねこちゃんとの接触を介して人に感染することがあるのです。
厚生労働省も、ペットを介した人への感染に注意するよう呼びかけています。
実際に猫から人へうつった事例も
たとえば、2017年には野良猫に噛まれた女性がSFTSを発症し亡くなったという悲しいニュースがありました。
また、2016年には、SFTSに感染した猫を診察中だった獣医師や動物看護師がウイルスに感染した例も報告されています(坂井ら, 2018)。
これまでは西日本を中心に感染の報告がされてきましたが、西日本のほかにも野生動物に感染が確認された地域は拡大の傾向があるため、ここ愛知県でも注意が必要です。
猫ちゃんを保護するとき、これだけは守って!
そうはいっても目の前に身寄りのなさそうなねこちゃんや、体調の悪そうなねこちゃんがいれば、助けたくなる方が多いですよね。
そんなときには、次にお伝えする感染予防のポイントをぜひ守ってください。
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素手では触らない(必ず手袋を)
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できればマスクも着用する
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タオル(処分してもいいもの)でくるみ、消毒できるキャリーや処分していいダンボール箱(底が抜けたり飛び出さないよう注意)に入れる
SFTSのほかに皮膚糸状菌も人に感染する可能性があるため、健康そうに見えても最低限こういった防御策はとっておいたほうが安心です。
当院でも保護されたり体調不良のねこちゃんを診察する際には、マスクと手袋を着用して対応しています。
これは他の動物、ご家族、そして私たち自身を守るためでもあります。
マダニ予防は“猫にも人にも”大切!
そしてもうひとつ大切なのが「ダニ予防」です。
外にいた猫ちゃんには、体のどこかにマダニがついている可能性があります。
感染症を防ぐためには、ダニを体につけない・早く駆除することがとても重要。
私たちヒトは草むらに行くときは長袖・長ズボンで体を覆ったり、虫よけを補助的に使ったりします。
わんちゃんやねこちゃんにはマダニに刺されることを防ぐ予防薬があるので、より効果的に予防することができます。
当院では、ねこちゃんの体調に応じたマダニ予防薬をご提案しています。
マダニだけでなくノミや消化管寄生虫の駆除にもなるため、外へ遊びにいくねこちゃんに限らず投与してあげることがおすすめです。
まとめ:やさしさに、ひと工夫を
動物を想うやさしさは、すばらしいこと。
だからこそ、その気持ちが悲しい出来事につながらないように、知識と備えで“やさしさを守る”行動を選んでください。
こんなときどうすればいいんだろう?と不安になったときは、無理をせず、まずは動物病院にご相談くださいね。