犬のトリミングについて、
「嫌がるのは性格だから仕方ない」
「吠えたり怒ったりするのは、しつけの問題かもしれない」
と悩まれる飼い主さんは少なくありません。
ですが実際には、トリミングが苦手な背景に、その子なりの不安や興奮のしやすさ、環境から受ける刺激が関わっていることがあります。
今回は、ときのしま動物病院の行動診療を受診し、トリマーと連携しながら環境を整えることで、少しずつトリミングへの苦手を減らしていくことができたわんちゃんの一例をご紹介します。
ときのしま動物病院行動診療科についてはこちらをご覧ください。
https://tokinoshima-ah.com/medical-information/behavior/
目次
周囲の犬の存在が大きな刺激になっていた
今回ご相談いただいたのは、トイプードルさんです。
以前通っていたトリミングサロンでは、周囲の様子が見えやすく、ほかの犬の姿や鳴き声が入ってくる環境でした。
その中で常に吠えてしまい、トリマーさんに攻撃してしまったこともありました。
そのほかの場面でも、犬を見ると過剰に吠えかかりハーネスを咬みちぎってしまったり、興奮した際に飼い主さんが咬まれてしまうこともあったそうです。
当院でのカウンセリング中にも、待合から聞こえる犬の声に強く反応し、扉を激しく開けたがる様子がみられました。
身体の問題を確認したうえで、行動面の背景を考えました
問題行動が見られる場合、まず身体の痛みや病気が隠れていないかを確認することが大切です。
この子についても、一般身体検査や各種検査を行い、身体疾患は除外しました。
そのうえで、犬の姿や鳴き声などの刺激に対して過剰に反応しやすいことが、トリミング時の強い興奮や攻撃につながっていると考えられました。
また、特に耳を触られることが苦手であることもわかりました。
行動診療では、「怒る」「吠える」といった表面に見える行動だけで判断するのではなく、何が引き金になっているのか、その子にとって何がつらいのかを整理していきます。

今回は投薬ではなく、環境調整を選びました
対応については飼い主さんと相談し、今回は投薬ではなく環境調整を中心に進めることになりました。
具体的には、トリマーと情報共有を行い、
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犬の姿が見えないよう、ロールスクリーンで視界を遮る
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犬の鳴き声が聞こえにくいよう、時間外の静かな環境でトリミングを行う
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耳を無理に触ろうとせず、苦手な部位に配慮する
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貸し切りの状態で落ち着いて施術する
といった工夫を重ねました。
また、自宅でも窓から散歩中の犬が見えると激しく反応していたため、自宅においても視界を遮る工夫をお願いしました。
小さな変化を積み重ねて、信頼関係が育っていきました
最初のうちは、トリミング中に震える様子があり、おやつも食べられませんでした。
それでも、月1回のトリミングを重ねる中で少しずつ変化がみられました。
3〜4回目には、トリマーさんを攻撃することなくトリミングを行えるようになり、トリマーさんからおやつを食べられるようになりました。
また、犬の声が聞こえても以前ほど強く反応しなくなっていきました。

日常生活でも、吠えかかることが減り、初対面の人にもお腹を見せてなでてもらえる場面がみられるようになっています。
もちろん、すべての子が同じような経過をたどるわけではありません。
それでも、「苦手だから無理」と決めつけるのではなく、その子が何に困っているのかを整理し、負担を減らす方法を考えることで、変化につながることがあります。
攻撃は「困らせたい」のではなく、その子の困りごとかもしれません
攻撃行動があると、飼い主さんもとてもつらいですし、わんちゃん自身も強い緊張や不安の中にいることがあります。
「仕方ない」とあきらめる前に、背景を見ていくことでできることが見つかる場合があります。
行動診療では、その子の苦手や困りごとを整理し、環境調整や関わり方の工夫を通して、少しでも安心して過ごせる方法を一緒に考えていきます。
トリミングが苦手、ほかの犬に過剰に反応してしまう、興奮すると手がつけられない。
そんなお悩みがある方は、まずは外来でご相談ください。
